慈雨を、きみに。

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  冷たい雨が白のコートから覗くドレスの裾を濡らした。 クリスマスイブだというのに落ちてくるものは雨粒で、…それが何だか物悲しい。 バス停から見る雨の夜の街は、イルミネーションも相まって夢の世界にいるようだ。 「あれ、加藤。二次会は?」 掛けられた声に振り向けば、さっきまで賑やかな式場で騒いでいたうちの一人が傘を差してすぐ横に立っていた。 「田畑くんこそ…」 「俺は用事があるから断ってきた。披露宴であれだけ盛大に祝ってやれば十分だろ」 傘を伝ってコートに落ちた水滴を手で払うと、私の横に並んで真っ暗な空を眺める。 「ホワイトクリスマスの結婚式にはならなかったか」 「…そうだね。寒いから雪になるかと思ったんだけど」 田畑くんにつられて私も空を見上げた。 傘から落ちた水滴が頬を濡らす。 「…その格好、寒そう。バスで帰るの?荷物あるしタクシー使えば?」 「ううん、酔い冷まししたいし、バスでゆっくり帰る」 喋った分だけ出来る真っ白な息は、雨空に虚しく溶けていった。 その白さがさっき見た友人のドレスを思い出させる。 「亜希子、綺麗だったね」 「…誰だって着飾ればあのくらいになるんじゃない?」  
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