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その言葉に驚いて隣を見上げると、悪戯っぽく笑う田畑くんと目が合った。
高校の頃から冗談ばかり言う人だという事を思い出して私も笑う。
「あの慎一だって相乗効果でそれっぽく見えてたし。式場マジックってやつ」
「あの二人、幸せになるといいね」
「俺は結婚したことを後悔すれば良いと思ってるけど」
「もう」
相変わらずの田畑節に、つい笑い声を漏らしてしまった。
そんなやりとりは、私の感覚を簡単に高校時代へと引き戻す。
引っ込み思案の私には、田畑くん達の華やかなグループは眩しすぎて。
男女関係なく接することの出来る亜希子は誰とも仲が良くて、当時から彼女は私の憧れの存在だった。
そんな亜希子なら、もっと目立つ人を…もっと華やかな人を選ぶと思ったのに。
「冗談なんかじゃないよ」
「え?」
物思いにふける私の耳に、田畑くんの声が届いた。
傘をずらして見上げるけど、田畑くんは真っ直ぐ前を見たままこちらを見ない。
真剣な顔が仄かなイルミネーションの光に照らされて、つい見とれてしまった。
「慎一なんか、幸せにならなければ良い」
その口から、およそ冗談とは思えないトーンで、…酷く冷たい言葉が発せられた。
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