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「くそ、思ったより怪我しちまった」 「だ、大丈夫?」 自分の体を見て眉を顰める虎次に、慌てて声をかける絵里子。大丈夫じゃないことは見てわかるが、こんな時なんと声をかけていいものか、絵里子には分からなかった。 「大丈夫じゃねえ。おい、ちょっと一緒に来い」 「え、え?」 虎次が絵里子の腕を掴み、立ち上がる。そしてはっと何かに気付くと、虎次は絵里子に声をかける。 「これから、何か予定あるか?」 その質問に、ううん、と言うと、 「よっしゃ、じゃあ早く行くぞ」 と腕を引っ張られ、絵里子は訳もわからず強引にどこかへ連れて行かれることになった。 人目につくような場所を通るでもなく、虎次が引っ張ってきた先は日当たりの良い保健室だった。多くの薬品が棚に並び、多くの生徒が療養したであろうベッドが並ぶ。 虎次は乱雑に扉を開け、適当な椅子に座った。絵里子はその隣の椅子に腰かける。…保健医は不在。 「これ、なんとか隠せねえ?」 虎次はバツが悪そうに言った。 「隠すって…包帯とか、バンソーコーとか?」 「ばかやろ、そんなの怪我してますって言ってるようなもんだろ!」 虎次は当たり前のように怒鳴った。怪我を隠そうなんて、虎次は何を考えているのだろう。しかも包帯やバンソーコーは隠すうちに入らないらしい。 では、何で隠すのか?ふと忍者が着用している手甲を思い出し、ツボに嵌った。虎次が手甲をしている姿を想像してしまったのである。 絵里子は「ふぐぅ」と喘いで、虎次から顔を反す。怪我を隠したいという虎次の姿は真剣そのものであったため、ここで笑っていると知られるわけにはいかなかったのだ。  
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