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昼休み、絵里子は一人裏庭に向かっていた。 人が居るとどうしても笑うツボは多くなり、さらに笑いを堪えるのが大変なため、いつもはあずさと二人で人気のない場所でお弁当を食べている。 しかし今日はあずさが先生に用事を任されてしまったため、一人でいつもの場所へ移動することに。裏庭は近道にもなるし人通りも無いので、躊躇なく裏庭を通ると決めた絵里子。 ―絶対に、絶対に人に会ったら下を向いて、なるべく関わらないこと!もしどうしても会話するようなことがあったら、長居しないで走って逃げる!いいわね? あずさはお母さんみたい。絵里子は頬を緩めながら思った。 穏やかな気持ちで裏庭に差し掛かる曲がり角。突然、けたたましい音が耳に届く。人がいるのかと身を乗り出して覗いた瞬間、襲ってくる大きな人影。 何が何だかわからないままに、絵里子は人影に巻き込まれ下敷きにされてしまった。 痛い、重い、苦しい、恥ずかしい。 複雑な思いが入り混じりながら、巻き込まれたこの状況にさえ笑えてくる絵里子は自分のことが嫌になりそうだった。 笑わないように口を思いきり閉じて、息を乱しながら上に乗っかっている人を退けようと試みる。 ―結構重いな。 絵里子は体をねじり、なんとか下敷きという状況から脱出することができた。  
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