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口元を覆いうつむいて肩を震わせる絵里子に、金髪男子は泣いたと思ってため息を吐く。 めんどくさいことになった。 そう思っているのだろう。首に手をやり、頭を回す金髪男子。さあどうするか、と迷っているところ、ふらり、と体が揺れた。 「きゃ!」 …どさっ。 絵里子の目の前で金髪男子が倒れてしまったのである。 一体、自分が笑いを堪えている間に何が起こったのか。 疑問だらけの現状に、絵里子の心臓はばくばくと早打つ。ぴくりとも動かない金髪男子に、絵里子の疑問は不安と焦りに変わる。 ―もしかして、死んでしまった? あれだけの乱闘があったのだ、時間差で強いダメージが襲うとか、実は心臓に病を抱えているとか、考えればたくさんの要因はある。 絵里子はぐっと口を閉じて、手元に落ちていた石を金髪男子に投げつけた。 ぴくり。 動く体に、死んでいないことを確認するが、絵里子はこのあとどうしようか考えていなかったため、あたふたした。 とりあえずあずさを呼ぼう。 そう思って携帯電話を手にした時、強い力で手首を掴まれた。 咄嗟に出た、痛い、という言葉は伝わらなかったのか、力を弱めることなく掴み続ける金髪男子の手。痛い、どうしよう、痛い。誰か助けて、と祈ったその時だった。 ぐううううぅぅ…。 派手に鳴り響いた音は、金髪男子のお腹に収まった。 開いた口が塞がらないまま、金髪男子の手が絵里子の手首から崩れ落ちる。 絵里子の周りには倒れた男子が1,2,3,4…。今、状況を知らない生徒が通りがかったら、まるで絵里子が全員を倒したように見えなくもない。 手首が解放された今でも携帯電話に意識が向かないのは、先ほどの音のせいだろう。金髪男子は最後の言葉を残すように、微かな声を発した。 「…お腹すいた…」 絵里子はぽかん、とした後、思わず盛大に吹き出した。  
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