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「ほんとにいいのか?」
金髪男子、もとい三谷虎次は目の前の小さな包みから目を離せずにいながらも、手を出すことに躊躇していた。
というのも、目の前の小さな包みというのは絵里子のお弁当だからである。
お腹すいた、と嘆いた虎次に、絵里子は微笑むというのもささやかすぎる笑みでお弁当を差し出した。
小ぢんまりとしたお弁当の包みを開いて、絵里子はどうぞどうぞと蓋を開ける。
「おおおっ」
お弁当箱の中身は彩り豊かな、食欲をそそる美味しそうなおかずがこぞって並んでいた。
こっちはおにぎりです、と別の包みを開くと、これまた美味しそうなおにぎりが二つ。
若干の量に不満はあるものの、自分の昼飯を差し出してくれたのだ、文句などない。虎次は有り難く頂戴することにした。
「~っ、んめぇ」
ぱくり。
鶏肉でチーズを巻いて焼いたもの。ベーコンとアスパラの炒めもの。パプリカとトマトとナスが一緒に煮てあるもの…。
どれも料理名は分からないけれど、慎ましやかな味と、たまに顔を出す手作り感が虎次にはたまらなかった。
何かを口に運ぶたび、瞳が輝き、花が咲く。夢中でごはんを食べる虎次の姿に、絵里子は笑いそうになるのを堪えた。
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