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 アパートの前まで来て、「何階?」と聞かれ、鈴那は二回だと答えた。すると桐島はスタスタと先に階段を上がっていく。  どこまで荷物を持ってくれるつもりだろうかと思っていると、階段を上がりきったところで桐島は振り返った。 「部屋は? 右? 左? 何号室?」 「右の202号室ですけど……」  桐島はまたスタスタと歩いていく。そして鈴那の部屋の前で止まった。 「早く開けて」 「は?」 「開けてくれないと入れないだろ?」 桐島は部屋に上がる気満々のようだ。鈴那は迷惑そうな顔を見せた。 「あっ、勘違いしないで、君の話が聞きたいだけだから」 「はぁ?」 「溜め込んでたら、ろくなことないよ。俺に全部はきだしてみたら」  なぜそんなことを言うのだろうと、鈴那は不思議に思った。 「だから、早く開けて」  仕方なくというか、半ば強制的に鍵を開けさせられた。しかも、「やっぱり汚い」と言いながら、遠慮する素振りもなく部屋に入っていく。急いで後を追いかけると、「やっぱり、こうなっているんじゃないかと思ったよ。君はまず顔を洗ってこい!」そう怒られてしまった。  確かに部屋の中は缶やビンで溢れている状態だった。洋服も数枚、脱ぎ散らかされたものがある、とても女性の部屋とは思えないありさまだった。
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