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 鈴那が目覚めたのはお昼近かった。なぜか頭がスッキリしている。起き上がると、テーブルの上に紙切れが置かれていた。綺麗になっている部屋を見て、昨日のことを思い出して部屋を見回したが、桐島の姿はなかった。  棚の上に置かれた札束が目に入る。自分が眠っている間に盗むことなんて簡単だったのに、と思いながらテーブルに置かれている紙切れを手に取った。 『おはよう。勝手に鍵を使って閉めておきます。鍵は新聞受けから中に入れておくので取ってください。あまり飲み過ぎないように。それから俺の携帯とメアドを教えておくので何かあったら連絡して。くれぐれも変なことは考えないように』 「きれいな字……」  そう呟いて、鈴那は玄関へ行き新聞受けから鍵を取り出して、下駄箱の上のいつもの場所に置いた。  携帯番号とメアドの書いてある紙を持ったまま、鈴那は冷蔵庫を開けてペットボトルの水を出して飲んだ。  しばらくその紙を見つめた後、お礼を言っておくべきだと思い、携帯を手に取ってメールを打った。 『昨日はどうもありがとうございました。変なことは考えていませんので安心してください』  仕事中だろうとは思ったが、早めに送っておいたほうがいいと思ってすぐに送信した。  桐島の顔を思い浮かべながら、昨日話していたことを思い返す。桐島は苦しんでいるように見えた。  それから、しばらく鈴那はテレビを見て過ごした。ちょうど三時になろうとした頃、メールが来た。
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