13/28
前へ
/28ページ
次へ
 自分の想像力の豊かさを、この時は最悪だと思った。  早く帰ろう……。デスクに戻りながら、周りの様子を確認した。まだ愛美は桐島のデスクの前にいる。思わず鈴那はゴクリとつばを飲み込んだ。鞄に荷物をしまい、佐藤のデスクに行く。 「お疲れさまです」 「お疲れ。今日の鈴那ちゃんはすごく頑張ってたね。めっちゃ仕事が早いからビックリしたよ」  佐藤には頑張っているように見えたのだろうが、鈴那にしてみれば、ただ無心に資料を打ち込んでいたにすぎない。 「何だか、調子がとてもよかったんです」  そう笑顔で言ったものの、隣の二人が気になり顔が引きつってしまいそうだった。 「疲れたでしょ。大丈夫?」 「はい。大丈夫です。では私はこれで」 「はいはい、じゃあ、また月曜日ね」  明日が休みで良かった。そう思いながら、鈴那は楽しそうに話している二人に近づき、短めに挨拶をして、足早に出口に向かう。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

200人が本棚に入れています
本棚に追加