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「えっ、あっ、うん。なんだかちょっと暑いだけ」
鈴那はそう言って、両手でパタパタと顔をあおいで誤魔化した。そして目の前の水を一気に飲み干し、気持ちを落ち着けようと深呼吸する。そんな鈴那の様子を、愛美は心配そうに見ていた。
「なんか疲れましたね」
食事が終わり会社に戻ってきて、鈴那と愛美はトイレにいた。
「そうね。疲れたわね……」
いろんな意味で、鈴那は疲れていた。
「体調、本当に大丈夫ですか?」
「うん、平気。大丈夫よ」
「ならいいですけど。何かあったらいってくださいね」
「わかった。ありがとう」
それから二人は一緒にデスクに戻ったが、鈴那は桐島が視界に入るたびに、あの夢を思い出していた。これでは仕事がはかどらない。
「私、ちょっとお茶淹れてくるね」
鈴那は愛美にそう言って給湯室へ向かった。お茶をいれながら、小さなため息をつく。
すると、「俺にもくれないか?」という声に、身体がビクッと反応した。
振り向くと、いつの間にか桐島が入口近くに立っていた。
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