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「しばらく冷やしておいたほうがいい」
「大丈夫です。そんなにかかってないですし」
「俺の言う通りにしろ。後から腫れたらどうする」
「……」鈴那は何も言い返せなかった。
給湯室はとても静かで、水が流れる音しかしない。また、あの夢を思い出してしまい、鼓動がどんどん早くなっていく。
「あ、あの……」
「ん?」
「桐島さんはもう仕事に戻ってください。私なら大丈夫ですから」
このまま一緒にいると心臓に悪い。そんなに気にしていなかった相手が、突然夢に現れ意識してしまうという、まさにあれだ。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。たいしたことないですから」
桐島は鈴那の顔を覗き込んで、「そうか。じゃあ、桐生はもう少し冷やしてから戻ってこい」と言い残し、給湯室を出て行った。
鈴那は深呼吸して水を止めた。手を拭くと、お茶がこぼれたところがヒリヒリした。
鈴那はお茶を淹れなおし、暴れる胸を静めるために、もう一度深呼吸してから次席へ戻った。
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