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コーヒーを飲みながら話をした。桐島は鈴那が部屋で倒れてないか心配でやってきたといった。隣部屋の人が、鈴那が出かけるのを見たというのを聞いて大家に電話をしなかったがもしもそれを聞かなかったら、大家に頼んで鍵を開けてもらおうと思っていたらしい。
鈴那は話を聞きながら、いつ桐島に妊娠を打ち明けようかと考えていた。本当は知られたくないというのが本音だけれど、働かせてもらっている以上、言わないわけにはいかない。
「あの……」
「ん? どうした?」
話せば桐島に嫌わえるかもしれない。呆れられて、突き放されるかもしれない。そう思うと、喉まで出かかっている言葉がつかえてしまう。
「桐生?」
桐島が心配そうに鈴那を見ている。
誰あの代わりだとしても、それでもいいからそばにいてほしい。恋人という関係ではなくても、友達という関係ではなくても、上司部下の関係でなくてもいい。たとえどんな関係でも、この人と一緒にいたいと思う。
そう思うと、自分の弱さに涙がじわじわと溢れてきた。これから母親として、このこと二人で生きていくと決めたのに……。
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