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父親は固い人だ。曲がったことが大嫌いで正義感が強い。だから不倫の末にできた子供だと知ったら、いい顔はしないだろう。きっと怒鳴られる。もちろん、産むことにも賛成はしてくれないと思う。でも産むと決めた以上、正直に話さなければならない。
それが母親になるためのけじめだ。
「うっ……」
炒め物をしている最中、ご飯が炊ける匂いに気分が悪くなり洗面所へ駆け込んだ。口をすすぐと、少しだけ気分が良くなったけど、まだ胃がムカムカする。
すぐに追いかけてきた母親はすごく驚いて、「あんた、まさか……」とつぶやいた。
否定しない鈴那に、母は「リビングにきなさい」と言って、踵を返した。
食卓で母と向かい合って座る。鈴那は母の顔を見ることができず俯いていたけれど、母の視線を痛いくらいに感じていた。
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