10

2/12
前へ
/12ページ
次へ
 妊娠八ヶ月、お腹もだいぶ大きくなってきた。長時間座っていることがきつくなり、休憩をさせてもらうこともしばしば。お腹が張ってしまうから、医師からは出来るだけ横になるようにと言われ、桐島たちに了承を得て接待室のソファでそうさせてもらっている。  赤ちゃんがお腹を蹴るのも強くなってきて、自分の中で生きているのだと鈴那は実感していた。  お腹を触る回数も以前より増えている。きっとこれを母性というのだろう。 「桐生、ちょっといいか?」  ソファで横になっていると、桐島がやってきた。 「はい」 「あぁ、そのまま横になっていていいから」 「いいえ、大丈夫です。もう戻ろうと思っていたので」  桐島は何を話に来たのだろうか。なんだか難しい顔をしている。 「体調はどうだ?」 「お腹さえ張らなければ、全然調子はいいんですけど」 「そうか……」  桐島は少し考えたあと、「桐生の身体をみんな心配している。仕事はそろそろ休んだほうがいいんじゃないかと思うんだが」と言った。  やはりみんなに迷惑をかけてしまっている。鈴那は申し訳なく思った。でも、これから赤ちゃんが生まれてくる。その前に少しでも貯金をしておきたいというのが、鈴那の本音だった。 「迷惑をかけてすみません。でも、できればもう少し働きたいです」 「赤ちゃんと桐生の身体が第一だ。クビにするとかそういう話じゃない。休んでいる間も給料はだすから安心して」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加