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妊娠八ヶ月、お腹もだいぶ大きくなってきた。長時間座っていることがきつくなり、休憩をさせてもらうこともしばしば。お腹が張ってしまうから、医師からは出来るだけ横になるようにと言われ、桐島たちに了承を得て接待室のソファでそうさせてもらっている。
赤ちゃんがお腹を蹴るのも強くなってきて、自分の中で生きているのだと鈴那は実感していた。
お腹を触る回数も以前より増えている。きっとこれを母性というのだろう。
「桐生、ちょっといいか?」
ソファで横になっていると、桐島がやってきた。
「はい」
「あぁ、そのまま横になっていていいから」
「いいえ、大丈夫です。もう戻ろうと思っていたので」
桐島は何を話に来たのだろうか。なんだか難しい顔をしている。
「体調はどうだ?」
「お腹さえ張らなければ、全然調子はいいんですけど」
「そうか……」
桐島は少し考えたあと、「桐生の身体をみんな心配している。仕事はそろそろ休んだほうがいいんじゃないかと思うんだが」と言った。
やはりみんなに迷惑をかけてしまっている。鈴那は申し訳なく思った。でも、これから赤ちゃんが生まれてくる。その前に少しでも貯金をしておきたいというのが、鈴那の本音だった。
「迷惑をかけてすみません。でも、できればもう少し働きたいです」
「赤ちゃんと桐生の身体が第一だ。クビにするとかそういう話じゃない。休んでいる間も給料はだすから安心して」
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