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 そろそろ出産準備や、赤ちゃんを迎える準備をしなければならない時期になっているものの、無理をすればお腹が張ってしまうからなかなか出かけられず、まだ全然終わっていない状態だ。桐島が今度の休みに連れて行ってくれると言っていたけれど、そこまで甘えていいものなのかと考えてしまう。桐島はまるで過保護な母親みたいだ。  桐島との約束の日。時間通りに迎えに来てくれて、近くの赤ちゃん用品店に行った。可愛いものがいっぱいあって全部欲しくなってしまう。赤ちゃん連れの親子を見ると、自分ももうすぐああなるのかと想像して、なんだか心が和んだ。 「桐生はこっちで産むんだよな? 産んだあとはどうするんだ? 実家に帰るのか?」  赤ちゃんの肌着などを選びながら、桐島が聞いてきた。 「こっちで産んで育てますよ。親にはなるべく頼らないようにって考えてます。とりあえず許してもらえたけど、事情が事情ですから」  鈴那は産むと決めた以上、出来るだけ自分の力でやっていきたいという決意を伝えた。 「そうか……」 「でも子供と二人になるって考えると、今の部屋は狭いんですけどね。だから引越しは産んでから考えようかなって思ってます。今動きすぎるのはどうかとおもうし」 「そうか。ちゃんと考えてるんだな」  桐島の手が鈴那の頭を撫でる。思わず肩に力が入った。突然のことに鈴那の顔はみるみる赤くなった。
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