10

5/12
前へ
/12ページ
次へ
 こんなことで浮かれてはいけないと思っても、このどうしようもない気持ちは消えてくれず、むしろ日を追うごとに強くなっている気がする。  赤ちゃんが時折お腹を蹴ってくる。何かを訴えているのだろうか……。 「どうした?」 「いえ。何でもないです」  桐島のことを直視できず、鈴那は視線を商品に向けた。 「お腹苦しくないか?」 「大丈夫です。ベビーベッドとかも見ていいですか?」 「あぁ。いいけど。あまり無理するなよ」 「わかりました」  買い物途中に何度か休憩をしているので、お腹はあまり張らず調子がいい。 「これで終わりか?」 「はい。十分です。ありがとうございます」  これで必要なものは、ほとんど揃ったはず。あとはこの子が生まれてくるのを待つだけだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加