第一章 傭兵の野望

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4 大陸は魔法大国が『ほぼ』支配しているのだが、エルフや妖精など超長寿種族の『独立地域』が存在している。 馬鹿げた魔力でチート魔法を振るう怪物たちとの『不可侵条約』は人間の『数』と超長寿種族の『質』による潰し合いを阻止する役割があるからか、基本的に人間の立ち入りは禁止されており、領域を犯したら殺されても文句はないとか。 まぁ面積だけなら全体の百分の一もないから、偶然入ってしまうなんてことはないだろうが。 ちなみにオリビアは大陸南部のド田舎であり、近くにエルフの『独立地域』である『神のお膝元』なんで大袈裟な呼び名の森があったりする。 そして。 黒マントの男と黒巫女服の女は緑に光る縄で両手両足を拘束され、四方八方からエルフに睨まれていた。 「うぅむ。こりゃまずったかねぇ」 『神のお膝元』の中心部よりやや北にあるエルフの集落に転移、拘束された馬鹿はのほほんとそう言った。 完全に落ち着き払っているジグルトとは正反対にガクガクガクガクゥ!! と冷や汗まみれで震える巫女服女は、 「てっ、てててて転移の、座標を、まっまちまち間違って…………っっ!!」 「はいはい落ち着こうなー」 「無理に決まってるじゃないですかぁ!!」 なんかついてきたアリナは役に立ちそうになかった。 ジグルトは呆れたように嘆息し、状況を確認する。 彼らは集落のド真ん中で手足の自由を魔法で封じられた状態で座っており、その周囲を剣やらハンマーやら機関銃(!?)やらを携えた数十人のエルフに囲まれ、ついでに見張り用の高台に弓矢構えたエルフが数人、と。 (うん。抵抗しねーでよかったわ。こいつら、上手い具合に俺の弱点突いてきたなあ) 『英雄』とまで揶揄されるジグルトは必ず強者となれる。 が、言ってしまえばそれだけだ。 頭いい奴には嵌められるし、数で押されたら普通に負けたりする。 (これまでは仕事選んできたから、こーゆーことは少なかったんだが━━━はてさてどうしたものか) 武器は全部奪われ、倉庫的な場所に放り込まれた。 刀も火薬もマッチも酒瓶(わざわざ麦茶と入れ替えたやつ)もなにもないとなると、気合い入れないと虐殺一直線だろう。
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