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「…………アリナうるさい」
「もうっ。なんでそんなに冷静なんですか!? いくら第二級警戒種を倒したからって集団のエルフはあの化け物さえも越えるのにぃ!!」
…………正直、『あの化け物』についてはいささか不審な点があるのだが、それについて考える暇もなかった。
「わっ、吾を無視するとは……なるほど。エルフに喧嘩を売るだけはある」
一人で勝手に納得した誰かさんがエルフを掻き分けながら顔を出した。
鋭利な瞳、冷徹な雰囲気、すらりとした長身、身に纏う簡素ながらも美しい緑のドレス。
どこぞの強気な女王かと誤解しそうな女だった。エルフ特有の耳が好奇心に疼くようにぴくぴくと動いているのが不釣り合いなほどに。
「我が君っ。このような下等種族と関わりを持つのは……っ」
「黙れ、パーシファルト。お前らもだ」
女王様が軽く見渡すだけで、パーシファルト含むエルフが膝をつき、臣下の礼をした状態で口を閉ざした。
いや、パーシファルトだけは何事か言おうとしてやめる……といったことを繰り返しているが。
(おーおー。本物のトップのご登場、か。…………ははっ、なんだよこのステータス)
我が君なんぞ呼ばれたエルフを視界に収めるだけで全身がゾクゾクと震えた。
オーソドックスな魔法は一切なし。
まるで少数精鋭のような魔法が揃っていた。
治癒、防御、回避といったものはなく、全部が全部攻撃魔法というのも特徴か。
(物騒なお嬢様なことで)
どうやらツキはこちらに回ってきたようだ。
いくら『数』が来ようが、これほどまでに圧倒的なステータスを取得できれば関係ない。
例え戦闘になろうが一撃で葬り去ることも可能だろう。
…………そうならないのが一番だが。
「まずは自己紹介といこうか。吾はアリシア=C=エレクトラ。一応、エルフ族の頂点なんてやっている。ちなみに今年で五歳だ」
……………………………………………………。
「はい?」
ポカーンと見返せば、イタズラが成功したと言わんばかりに笑うアリシアの姿があった。
「超長寿種族の弊害だな。一定まではすぐに育つが、そこで止まってしまってな。お陰で仲間内でも見た目では誰が年上かも分からん始末だ」
ははは、と朗らかな笑い声。
ジグルトはひとつ頷き、
(口説かなくてよかった)
幼女相手に欲情するほど堕ちてはいない。
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