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などと自分に言い聞かせていると、アリシアが不機嫌そうにこちらを見据えていた。
首をかしげると、低い声が返ってきた。
「吾にだけ名乗らせて終わらせるつもりか? いくらなんでもそれは感心しないぞ」
「ああ、なるほど。俺はジグルト。未来の軍事的学園生で今は傭兵に甘んじている」
「軍事的学園か。チャチな魔法技術を数年しか維持できないものを後生大事に抱えている機関だったな」
「まぁエルフから見りゃ人間なんざそんなもんだわな」
「ほう? 言い返してこないのか」
「ま、身をもって実感したんでね」
「?」
不思議そうにされても、まだ安全が確保されたわけではないのだ。
こちらの手札を晒すわけにはいかないので、
「ほら。いつまでも震えてないで自己紹介しとけって」
「しゃっぱ!?」
しゃっくりにも似た悲鳴の後、流れに乗るような声が響く。
「アリナですっ。一六歳で好きな食べ物は煮干し! 彼女募集中です!!」
「お、おう……。そうか」
アリシアが一歩後ずさったのはやはり後半の不穏な言葉からか。
「おいおい。エルフの嬢ちゃん引いてるじゃねーか」
「もう駄目なんです終わりなんですー!!」
「まぁまぁ。特異な性癖とは思うがそう悲観するなって。俺は気にしないぞ」
ズレたフォローをするジグルトをびしびし叩き、半泣きのアリナが叫ぶ。
「ばかばかばかっ。こんなことならついてこなきゃよかったぁ!!」
「酷い言い様だなオイ」
「だってエルフですよ!? チート集団ですよ!? やだー殺されちゃうよー!!」
「あーもーめんどくせーなコイツ」
そう呟けば、鬼気迫る視線が向けられた。
これは『お前のせいでこんなことになってんだぞコラ』ということか。
…………うまく立ち回れば殺し合いは回避できそうなのだが。
「まぁ危ないカミングアウトもあったが、とりあえず話し合いといこうか」
「ジグルトはノーマル?」
「まぁな。じゃなきゃアリシアを口説いてるっつーの」
「ふにゃ!?」
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