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ジョークだったのだが、そんなものが通用しない奴がいた。
パーシファルト……かと思えば、意外にも他の奴だった。
「人間めっ。我が君を汚すとは! 殺してやるッ!!」
ちっさい女だった。
アリシアとは比べ物にならないくらい。
背ではない。
そこじゃない。
女の象徴。
母性の象徴。
すなわち胸だ。
「うるせーぞ貧乳」
「なッ!? この人間がァ!!」
どうやらパーシファルトだけが短気なわけではないようだ。
その証拠に踊り子のような布地が少ない格好の薄緑髪の女はばっと立ち上がり、やけに細い槍を振りかざしてきた。
アリシアが手で制しなかったら串刺しだったろう。
「落ち着け、エリーナ。大事な『刺激』を殺そうとするな」
「しかし! この男は我が君に対してあのような無礼な物言いを!!」
「吾は言葉一つで逆上するほど器の小さい女なのか?」
「あ、いえ、そのようなことは……」
「ジグルトらとは吾が話す。わかったな?」
「はっ。それが我が君の望みならば」
キレるのも早ければ納得するのも早かった。
言葉の終わりには膝をつき、綺麗な臣下の礼をとり、恭しく頭を下げる。
「なんつーか大変だな、エルフ族の頂点ってのも。ちっせえことでいちいち騒がれたら居心地悪いだろ」
「うむ。否定はしない。が、これでも大切な仲間でな。あまり馬鹿にされるのは気持ちよくないな」
その台詞を聞いたエルフたちは『なんと恐れ多いことを』とでも言いたげに一層深く頭を下げていた。
とはいえ、かなり喜んでいるようだし、部外者がどうこう言うことでもないだろう。
ジグルトは肩をすくめ、さっさと先に進める。
「ま、んなことはどーでもいいんだ。俺らとしちゃ無意味な争いは御免でな。できれば殺し合い以外でこの場を納めてーんだけど」
「先にルールを破ったのはそちらだ。なにをされそうと文句は言えないはずだが」
「だな。でも、だからって簡単に死を受け入れられるもんでもねーだろ。だから、まぁ、穏便に済ませちゃくれねーかね?」
ここがターニングポイントだ。
アリシアの、エルフ族の頂点の決定で、殺し合いか和睦かが決定する。
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