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「はぁ。別に構わねーが、そっちはいいのか?」
「ん? 吾が要求したのだ。不都合があろうはずがないだろう?」
「いやいや、不都合の塊が最低二つ転がってるから」
「???」
本気で不思議そうなアリシアは気づいていないようだ。
敵意……いや殺意駄々漏れのエルフどもに。
「(チッ。めんどくせーな)」
「なにか言ったか?」
「なんでもねーよ。ああ、『罰』なら受けていいが、理由を聞かせてくれねーかね?」
「ふむ。それは『ここでは』言えんな」
「そうかい。ならいい。じゃあ今日のところは帰るとするわ。受験控えた身なんでね。荷物はちゃんと返してくれるよな?」
「当たり前だ。ついでに『紋章』も持っていくといい」
流れるようにアリシアは右手を横に振るった。
その軌跡に沿って溢れたエメラルド色の光がジグルトとアリナを包み込み、パリンと拘束の魔法を粉砕した。
「これでジグルトらの位置情報は吾に逐一伝わるし、エルフ族に襲われそうになっても『紋章』を照合させれば、即座に殺されることもないだろう」
つまりは発信器……いや名刺か。
正直、こういうものは拒否したいところだが、エルフ族を刺激するのは避けたいところなので、一応は受け入れておくのがいいだろう。
「そうかい。なんでもいいからさっさと帰してくれよ。受験生を長時間拘留なんざ非常識すぎだぜ?」
「それもそうだな。では今日のところはこれでお開きとするか」
さて、明日から『紋章』の解除方法を探さないとな━━━なんて意気込んでいたら、アリシアは不穏な台詞で終わらせてくれた。
「では、また明日な」
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