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「チッ。なんなんだよ、この真っ白野郎は」
疲れたように吐き捨てるジグルトに半ば重ねるように、背後から呑気な声が聞こえてきた。
「ぅ……ふぁ……うるさい……」
どうやらあれだけ騒いでもアリナは飛び起きもしないようで、寝返りをうって寝息をたて始めていた。
周囲が何事かと騒ぎ始めているというのに。
(大物なのか間抜けなのか天然なのか。うん、馬鹿なだけか)
しばし唸り、面倒な弁解を回避するためにアリナを背負って窓から飛び出す。
一連の動作は流れるように素早かった。
このようなことには馴れていると示すように。
二階からの飛び降りなので、軽く膝を曲げ、衝撃を逃がせば大したダメージを受けずに済んだ。
できれば白の侵入者から話を聞きたかったのだが、受験前に余計なトラブルを広めるのは得策ではないだろう。
ただでさえ『全盛期の魔法使いを獲得するための』学園に入学しようとしているのだ。
下手に問題ありだと世間に広めたって得になることはないだろう。
「おら起きろ。そんで自分で走れ」
「ヴぁー……うるさーい……」
「チッ。めんどくせー」
ジグルトは着替えなんか持ってきてなかったからマント姿だし、アリナはネグリジェだが、彼女の場合『収納』の魔法で荷物は全部しまっているようだから、忘れ物はない……、
「やべっ。刀忘れてた」
ポケットに火薬などは突っ込んでいたのだが、刀はすぐそばに置きっぱなしだったはずだ。
無力化が目的だったため、使う機会がなく、完全に失念していた。
「ま、古くさい遺跡で拾ったもんだし、別にいっか」
気が向いたら取りに戻るくらいの気持ちでいいだろう。
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