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その時。
全身真っ白の侵入者は意識を取り戻し、心配そうに接してくる人々を軽くいなしていた。
正直、鬱陶しかったのだが、だからといって排除するほど世間知らずではない……と一人頷く。
白の侵入者━━━意外にも女の声だった━━━はなんとか場を納め、標的が泊まっていた部屋に入る。
(標的ロスト。奇襲の有効性はなしと判断。手段を変更。『戦争』にて目的を遂行する)
そうと決まれば今は力を蓄えることに専念すべきだろう。
軽度とはいえ、火傷も負っていることだし。
(標的の性質上、アタシを殺すことも可能だったはず。少なくともアタシのスペックならひと一人殺すなど簡単なはず。なぜ、生かした?)
自分から情報を引き出すつもりだったのか、それとも敵を殺せないほどの世間知らずなのか。
どちらにしても女がやることは変わらない。
『主』の命令に従い、『桂馬』が『金銀』にランクアップすることを阻止する。
そのためなら『強者』たるジグルト=ファインダーだろうが上回ってみせる。
「…………?」
ゴツリ、と。
女の足に何か固いものがぶつかった。
視線を下に向けると、そこには量産品らしき刀があった。
(標的の忘れ物か……)
作戦の役に立つものではないだろう。
そもそも必ず『強者』になれる標的に『強力な武器』を所持する理由はない。
相対するだけで敵より強くなれるのに、それ以上強くなる必要なんかないのだから。
「…………、」
とはいえ。
忘れ物に気づいて放っておくのは世間知らずのやることだ……とどこかズレたことを思った女は刀を拾い上げていた。
この後どうするか。
常識人を自称する女は当然のように動き出す。
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