プロローグ

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アリナ=スコールは森の中を走っていた。 足はジンジンと鋭い痛みを発していた。 息をするたびに肺が潰されたかのような錯覚を受けた。 今すぐ立ち止まりたかった。 気を抜けば地面に倒れそうだった。 だが、それはできない。 そうすれば、待っているのは確実な死だ。 彼女の後方。 生い茂る木々を溶かしながら迫り来る異形。 全長五メートル。 八本の巨大な触手で地面を融解させているのか、踏み出すたびに油が焼けるような音が鳴り、深い穴が生まれていた。 球体に触手を生やしたようなソイツは全身を真っ赤に染めていた。数十メートル離れているアリナからでも感じるほどの『熱』を放っているからだ。 第二級警告種。 有力ギルドが総員で対処しなければならないほどの怪物。それがアリナ一人を殺すために追いかけているのだ。 彼女も『天上の嵐』という有名ギルドのメンバーだが、あのクラスの怪物と一人で殺り合えるほどではない。 そもそもアリナはギルドでもみそっかすの最弱なのだ。第二級警告種討伐など不可能なのだ。 (わっ、私は、ただ第五級警告種のウインドウルフ討伐の依頼を受けて『漂流の森』に来たのに、なんであんな怪物が…………っ!!) 『漂流の森』にはアリナなら鼻唄混じりで倒せる魔獣しかいないはずなのだが、なぜ今回に限って第二級警告種が現れたのか。 そんな疑問が脳裏をかすめた時だった。 ドッバァァン!! と。 球体が横に大きく裂け、そこから吹き荒れた熱波がアリナを襲った。
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