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一日様子見として病院で過ごしたアリナは大陸北部のバーニヤにあるギルドへ戻るために『駅』に来ていた。
『駅』といっても路線などがあるのではなく、普通の店と変わりない外装で、中も転移切符を一人の男性がカウンターで売っているというものだ。
客は一人しかいなかった。
見覚えのある男だった。
というかジグルトだった。
「え?」
彼は転移切符片手にトボトボとアリナの横を通り過ぎようとしていた。
彼女は咄嗟に彼のマントを掴んでいた。
「んあー?」
「あの、元気がなさそうですけど、どうかしました、か……?」
「…………落ちた…………」
ボソリと。
どんよりとした声音で彼は呟く。
「筆記試験とかアリかよ!? つーか軍事力確保なら実力ありゃいいだけじゃねーか! ざけんなよオイ!!」
「え、えぇと……」
アリナは言葉を選ぶように、
「軍事的学園の筆記試験って『アマテラス』でも二〇〇満点中一〇点取れれば合格だった気が…………」
「ハッ。傭兵舐めんなよ。学力なんざあるわけねーじゃん!」
「あ、あはは……」
「くそっ、まだだ。『アマテラス』は比較的早期に入試が始まるからな。他の軍事的学園なら入れるはずだ!」
「ギルドは」
「ねーよ!」
ばっさり両断し、ジグルトは自分に言い聞かせるように呟く。
「筆記がねーとこならいける。そう、次はオリビアの『ヨルムンガンド』だ!!」
「あの……それ、私もついて行ってもいいですか……?」
「ん? アリナって軍事的学園にゃ興味ねーんじゃなかったっけ?」
「っ!? そ、それはですね━━━気が! 気が変わったんですよっ!!」
目は泳いでいるわ、冷や汗は流れているわで、超怪しいのだが、ジグルトはそう感じなかったようだ。
彼は一つ頷き、
「まぁアリナの行動を俺が強制するわけにゃいかねーわな。俺は転移で行くが、アリナはどうする?」
「私も転移で。お金なら無駄にありますので」
そんなわけで。
『天上の嵐』ギルド員のアリナと一緒に受験戦争に挑むことになった。
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