【暴走Ⅲ その壱 】

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『竜。お前、あんまり無理すんなよ。蘭花が心配して泣きそうだったぞ。』 何言ってんだ! 『そうなのか?蘭花。』 にやけて顔を除き込む竜兄。 「…泣いてませんけど。」 ビールを呑みながら、そっぽを向く私。 『嘘つけ。さっき、泣きそうな顔して私が竜兄の重荷になってないかな。って、言ったじゃねぇか。』 キィー!こいつ! 蓮兜兄が居なくて、少し可哀想だと思った私が間違ってました! 「アホか!余計な事言うな!馬鹿兄貴!」 『お前!馬鹿とかアホとか、そんな事しか言えねぇのか!あぁ?!』 何だよ!!元気じゃねぇかよ!! 『お前らさ、さっきまで仲良くしてたのに訳わかんねぇな。二人共、煩ぇよ。』 竜兄の冷めた言葉に意気消沈。 『ああー!もう!』 止められイライラの翔兄がタバコを取り出しくわえ火を着けた。 「あれっ?翔兄。タバコ吸ってた?」 あんまり見た事ないような…。 『あっ?あぁ。蓮兜が居たら吸わねぇ。』 あー。そうなんだ。 あっ。そうか。組員さんと居る時は吸ってるの見た事ある。 「何で?」 『あいつが嫌がるからな。身体に悪いから辞めろって。自分も昔は吸ってたのにな。いつの間にか辞めてたな。あいつは。』 『俺も辞めたぞ。こっちに帰って来てから。あっちでは、吸ってたけどな。』 「竜兄。タバコ吸ってたんだ。知らなかった。で?何で辞めたの?」 『蘭花が居るから。やっぱりな。少しでも蘭花と長生きしたいとか思ってな。身体資本だろ?だから。』 「まぁ。そうですね。翔兄も辞めたらいいのに。蓮兜兄も翔兄の身体、心配してんじゃないの?」 うん。きっと、そうだ。 『だろうな。でも、なかなか辞められねぇ。極道の若頭してっとな。そんなんも必要だったりするんだよ。真面目な極道なんていねぇだろ。まぁ。俺の場合は、蓮兜が居ねぇとイライラして吸うけどな。』 あぁ。そう言う事ね。
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