【暴走Ⅲ その参】

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実の親にされた事の傷を父さんが治してあげたんだ。 一度は棄てようとした命。 だけど、救われた命。 矢部さんはそんな父さんに就いてきた。 全国規模の極道として築き上げた西極組の組長を改めて凄い男だと思った。 今日も矢部さんに本当に休暇をあげたかったんだろう。 西極組の組長の側近として頑張ってきた矢部さんへの父さんからの気遣いだったんだと思う。 「…凄い人だね。父さん。人の命を預かるなんて事は簡単に出来る事じゃないよね。矢部さんも父さんに出逢えて良かったね。本当に良かった。」 『本当だな。やっぱ、組長はすげぇよ。蘭花は組長の血を継いでんな。』 竜兄が私の頭を撫でながら言った。 『うん。俺も思った。翔さんも極道として立派にやっていける器だけど、蘭ちゃんが強いのもお父さんに似てるんだよ。自分だけじゃなくて、人の事も考えられる強さがあるから。』 來希が微笑んで言った。 「翔兄。矢部さんも一緒に呑まないかな?どうせ、一人でしょ?呼んでくれば?休みだし、無礼講でって事でさ。」 『だな。よしっ!呼んでくっかな。』 そう言って翔兄は立ち上がりリビングを出た。 前に父さんが言ってたな。 ここに居る奴等は、親に虐待を受けたり見放されたりした奴ばっかりだ。 だから、あいつらにとっての家はここだけなんだ。 あいつらの事、家族だと思ってやれ。 沢山の組員さん達が居るけど、それは皆、何らかの事情を抱えてきた人達ばかり。 西極組の一員として、ここに来たことを誇りに思ってほしい。 父さんが築き上げた西極組に自分が今必要とされてる事を誇りに。
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