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しばらくして翔兄が矢部さんを連れて来た。
「矢部さん。こっち。適当に座って下さい。ビールでいいですか?」
立ち上がりキッチンへ向かった。
『あっ。いえ。自分は大丈夫ですので、気にしないで下さい。』
『何言ってんだよ。今日は休みなんだから、お前も呑めよ。なっ?』
翔兄が矢部さんをソファーに座らせた。
「はい。とりあえず、ビールで。翔兄の言う様に今日は休みなんですから、気を使わないで無礼講でいきましょう。」
『すいません。じゃあ、遠慮なく頂きます。』
私も竜兄の横に座り呑む。
「矢部さんって、いくつなんですか?」
『今年で、30になります。親父に拾ってもらってから、10年ですかね。』
「へぇ~。まだ。若く見えますね。翔兄の方が歳上に見えるけど。」
翔兄を見る。
『はぁ?何だと?俺はまだ22だ。』
知ってます。
『若は落ち着いているからですよ。』
ナイスフォローだね。矢部さん。
『翔さんが落ち着いてたら、蓮兜さんはどうなんの?』
來希。いい質問。
『蓮兜は、昔から変わらねぇよな。落ち着いてるって言うか、穏やかっていうか。でも、喧嘩ばっかりしてたな。』
竜兄の言う事に納得。
『何で蓮兜の話になるんだよ。矢部の話してただろうが。』
あっ。そうだったね。
『いえ。自分は面白みの無い人間ですから。何も無いですよ。』
真面目!矢部さん!
「矢部さん。謙遜し過ぎ。そんなね、何も無い人気なんて居ないから。矢部さんの良いところは、真面目だし父さんに忠実だし、料理上手だし、気が効くし。ほらっ。ねっ?良いところいっぱいあるよ。まぁ。悪いところは、そうやって遠慮するところかな。完璧な人なんて存在しないよ。だから、自分で面白みの無い人間だとか言わない。」
もう、だいぶ呑んでるからタメ口。
『蘭花お嬢にそう言ってもらえると、嬉しいです。ありがとうございます。』
少し笑った。
「あっ!今、笑った!矢部さん!たまには笑って。竜兄に無表情とか言われてるよ!」
『蘭花。お前な。余計な事言うなよ。アホじゃねぇか?』
竜兄。アホとか言うな!
「何で!だって、ほらっ。笑ったじゃん。ねっ?矢部さん。笑ったよね!」
竜兄の腕を掴みながら、矢部さんを指差す私。
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