【暴走Ⅲ その参】

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しばらくして翔兄が矢部さんを連れて来た。 「矢部さん。こっち。適当に座って下さい。ビールでいいですか?」 立ち上がりキッチンへ向かった。 『あっ。いえ。自分は大丈夫ですので、気にしないで下さい。』 『何言ってんだよ。今日は休みなんだから、お前も呑めよ。なっ?』 翔兄が矢部さんをソファーに座らせた。 「はい。とりあえず、ビールで。翔兄の言う様に今日は休みなんですから、気を使わないで無礼講でいきましょう。」 『すいません。じゃあ、遠慮なく頂きます。』 私も竜兄の横に座り呑む。 「矢部さんって、いくつなんですか?」 『今年で、30になります。親父に拾ってもらってから、10年ですかね。』 「へぇ~。まだ。若く見えますね。翔兄の方が歳上に見えるけど。」 翔兄を見る。 『はぁ?何だと?俺はまだ22だ。』 知ってます。 『若は落ち着いているからですよ。』 ナイスフォローだね。矢部さん。 『翔さんが落ち着いてたら、蓮兜さんはどうなんの?』 來希。いい質問。 『蓮兜は、昔から変わらねぇよな。落ち着いてるって言うか、穏やかっていうか。でも、喧嘩ばっかりしてたな。』 竜兄の言う事に納得。 『何で蓮兜の話になるんだよ。矢部の話してただろうが。』 あっ。そうだったね。 『いえ。自分は面白みの無い人間ですから。何も無いですよ。』 真面目!矢部さん! 「矢部さん。謙遜し過ぎ。そんなね、何も無い人気なんて居ないから。矢部さんの良いところは、真面目だし父さんに忠実だし、料理上手だし、気が効くし。ほらっ。ねっ?良いところいっぱいあるよ。まぁ。悪いところは、そうやって遠慮するところかな。完璧な人なんて存在しないよ。だから、自分で面白みの無い人間だとか言わない。」 もう、だいぶ呑んでるからタメ口。 『蘭花お嬢にそう言ってもらえると、嬉しいです。ありがとうございます。』 少し笑った。 「あっ!今、笑った!矢部さん!たまには笑って。竜兄に無表情とか言われてるよ!」 『蘭花。お前な。余計な事言うなよ。アホじゃねぇか?』 竜兄。アホとか言うな! 「何で!だって、ほらっ。笑ったじゃん。ねっ?矢部さん。笑ったよね!」 竜兄の腕を掴みながら、矢部さんを指差す私。
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