【暴走Ⅲ その参】

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矢部さんは私をじっと見て、一筋の涙を流した。 『…親父はいつも自分に笑えと言っていました。何も考えずに笑えと。だけど、その言葉の意味が自分には分かりませんでした。…蘭花お嬢。ありがとうございます。親父が何を言いたかったのか今更ながら理解できました。蘭花お嬢の言う通り、自分は西極組に西極 龍華と言う男に命を預けました。救われた命、西極組の為に親父の為に罪を背負いながら全うして行こうと、ここに来ました。でも間違いでした。過去を捨て、自分としっかり向き合ってから西極組に来るべきだったんですね。10年間、自分は何をしてきたんでしょうね。親父の気持ちに何一つ答えていなかったんですね。親父は優しいから何も言わなかった。自分は甘えてました。親父が帰ってきたら話をしてみようと思います。蘭花お嬢。本当にありがとうございました。』 そう言って頭を下げた。 「ですね。父さんは相手の出方を見る人だから、それとなくしか矢部さんには言えなかったんですよ。矢部さん。今からでも全然遅くないです。今からでもじゅうぶん間に合いますから。これからの人生楽しんでください。」 矢部さんを見て、微笑んだ。 『はい。そうします。』 そして、矢部さんも微笑んだ。 ほらっ。笑えた。
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