【暴走Ⅲ その四】

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うつ伏せたまま眠りについた。 今日は昔の事を竜兄の友達に話したせいか、夢を見た。 そう。昔、独りだった頃によく見ていた夢を。 真っ暗な闇の中に独り丸まって座る私。 闇の向こうから光が差し込む。 光の中から懐かしくて大きな優しい手が私に向かって伸びてくる。 その手を掴もうと手を伸ばす私。 でも、その手はどんどん遠くなり光と共に消えそうになる。 「待って!消えないで!竜兄!」 思わず叫ぶ私。 光の方を見るとその中に立っているのは竜兄で。 ニッコリ笑って両手を広げる。 私は嬉しくて光の中、竜兄の胸へ飛び込んだ。 温かい。 懐かしい匂いと安心する腕の中。 幸せを噛み締める私。 ただただ幸せで。 フッと目が覚めた。 いい夢。 目の前に眠ってる竜兄の顔を見てフッと微笑む。 ギュッと抱き付けばギュッと抱きしめてくれる。 嫌だったあの夢。 今は違う。 幸せな夢。 いつまでもこの夢が続きます様に。 夢の中でも幸せだと思える私は本当に幸せ者だ。 竜兄も幸せな夢みてるかな? フッと微笑む竜兄の寝顔。 見てるんだろうな。 私と同じ夢。 いくつになっても二人でこうして幸せな夢、見ようね。 寝ている竜兄にチュッと口づけ、また目を瞑る。 夢の続き見れるかな。
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