【暴走Ⅲ その四】

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何か凄く竜兄に申し訳ない。 「…ごめんね。竜兄。」 謝ることしか出来ない私。 『別に謝る事でも無いだろ。俺の誕生日なんてどうでもいい。』 ソファーに座りながら竜兄が言った。 「どうでもよくないよ。私と同じ誕生日とか言ってくれたら良かったのに。まぁ。聞かなかった私が悪いんだけど。」 教えてくれたら良かったのに。 『俺は蘭花の誕生日を祝えたらそれでいいから。気にするなって。よしっ!そろそろ行くか。なっ?』 立ち上がり私の頭を撫でる。 『どっか行くのか?』 翔兄に聞かれ竜兄が答える。 『俺ん家。最後の休みだから二人でゆっくりするんだよ。行くぞ。蘭花。』 「ん。行って来ます。」 うかない気持ちのまま竜兄の後に続いてリビングを出た。 車の中。 考えるのはやっぱり、さっきの事。 私が誕生日を迎える度に竜兄も誕生日を迎えてたんだ。 おめでとうの一言も言った事無い。 『何黙り込んでるんだ?どうした?』 「……ごめん。竜兄。好きな人の誕生日知らないとか…本当、あり得ないよね…。私。最低だ。」 本当、最悪な彼女だよね。 『何だ。まだ気にしてたのか?』 「…そりゃあ気にするでしょ。だって、竜兄の事全部知りたいとか全部好きとか散々言ってたのに。基本的な事知らないとか。もう、凹む。」 項垂れる私。 『凹むなよ。着いたぞ。とりあえず家に行くぞ。』 凹んだまま車から降り竜兄の家に向かった。
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