【暴走Ⅲ その四】

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家に入りソファーに座る竜兄。 『蘭花。こっち来い。』 突っ立ったままの私を、呼ぶ竜兄。 竜兄の横に座る私。 私の肩を抱き寄せ話し出す竜兄。 『蘭花。俺はな。本当に自分の誕生日はどうでもいいんだ。あっちに居るときもな周りが、いくらおめでとうって言ってくれてもピンと来ないんだよ。俺にとって4月10日は蘭花の誕生日なんだ。俺の愛する女の誕生日なんだよ。それが俺への最高のプレゼントだと思うんだ。自分の誕生日に愛する女が産まれて来てくれたんだぞ。すげぇと思わねぇか?お前の存在自体が俺へのプレゼントなんだよ。だからお前が気にする事は何もない。』 竜兄は狡い。 そうやっていつも私の心を掴んで離さなくしてしまう。 「じゃあ、私も最高のプレゼント貰ってる。竜兄がこの世に産まれて来てくれた事が私にも最高のプレゼントだから。他に何も要らない。」 そう言ってキスをした。 『蘭花。俺はお前さえ居てくれたら何も要らないから。だから何も考えなくていい。夕べから様子がおかしくて気になってたんだ。』 「夕べはね。竜兄を好きすぎて自分で自分が怖くなった。キスをする度にね。愛し合う度に何だか自分でも分からないほど心から溢れ出す愛が怖くて。不安とかじゃないの。ただ好きすぎるだけなんだ。」 重い愛なのかもしれない。 『そうか。それなら良かった。蘭花。それは俺も同じだから。お前に触れる度に心の奥底から愛だけが溢れる。どうしようもなくな。』 竜兄も同じなんだ。
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