【暴走Ⅲ その壱 】

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「ふざけんな!翔兄、待っとくって言ったのに!何だよ!あの女!待つのは辛いけど、逃げるなよ!まだ、一人で悩んでる蓮兜兄が可哀想だよ!」 胸ぐらを掴み怒りをぶつける。 『俺だって…俺だって!どうしていいか分かんねぇんだよ!ずっと待ったんだよ!なのに、アイツは何も言ってこねぇし!俺はいつまで待てばいいんだよ!』 私の手を振りほどき翔兄が苦痛に顔を歪ませた。 「だからって!あんな女、連れ込むな!それは私が許さない!我慢の限界なら、もう一度ちゃんと向き合いなさいよ!蓮兜兄に自分の気持ちぶつけなさいよ!今の翔兄は嫌い!最低!」 そう言い放ち私は玄関から飛び出した。 やりきれない思いがした。 翔兄の気持ちは分かる。 待っていると約束をしたけど、あまりにも待ちすぎて、自己完結をする事で楽になりたかったんだ。 どんどん過ぎる時間の中で、どうする事も出来ない思いだけが溢れてしまったんだ。 だから、逃げた。 逃げて気を紛らわしたかったんだ。 だけど、やり方ってもんがある。 今の翔兄は最低だ。 とことんまで我慢して、どうしようもなくなったなら行けばいい。 諦められないなら思いをぶつければいい。 私には出来なかった事。 自己完結で自滅した私。 記憶を無くしてしまうまで消したかった思い。 それは相手を酷く悲しませる事になる。 そんな想いを翔兄と蓮兜兄には、してほしくない。 私と竜兄が苦しんだ、あの辛く苦しい想いだけはしてほしくないから。 やりきれない思いを胸に抱えながら、竜兄の家に行った。 今日は顔を出す気分じゃない。 合鍵で家に入り、ソファーへとなだれ込んだ。
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