【暴走Ⅲ その弐】

2/28
前へ
/334ページ
次へ
ソファーに体育座りをして、クッションを抱え込み外の景色をボォ~と見ていた。 あの二人。 翔兄と蓮兜兄。 本当に何があったんだろう。 翔兄は自分が悪い様な言い方だった。 確かに翔兄は我が儘で俺様で自分勝手だけど……って、良いとこないじゃん。 あっ。そうそう。 翔兄はあんなふうに見えて、優しい。 それが、翔兄にとって大切な人なら尚更。 人前では見せない優しさだけど、二人だと凄く優しいんだ。 蓮兜兄にも凄く優しいと思う。 ずっと一緒に居た位だし。 翔兄の族車の後ろは、蓮兜兄の特等席だったみたいだし。 相手を思いやる気持ちもある。 心から蓮兜兄を愛しているのが、雰囲気で伝わって来てたから。 それが…。 蓮兜兄をずっと悩ませる様な事って、何だろう。 蓮兜兄は、凄く世話好きでおおらかな人。 多少の事では怒らないし、いつもニコニコしている。 翔兄の我が儘も俺様も全て受け止めて、上手に翔兄を扱える人。 そんな人が、ずっと悩んでも考えても答えが、出ない問題が起きたのが私には理解出来ない。 蓮兜兄は、翔兄に逢いたくならなかったのかな。 顔を見たくなかったのかな。 会ってしまったら、答えが見つけられないからかな。 翔兄は、蓮兜兄に逢えなくておかしくなった。 最低になった。 蓮兜兄に逢えない事で、翔兄の判断が鈍るんだ。 それだけ、翔兄にとって蓮兜兄の存在は大きなものなんだ。 それは、私と竜兄も同じだから。 だから、分かる。 翔兄の気持ちも。 蓮兜兄の気持ちも。 だけど、二人の問題だ。 自分が何もしてあげられない事に、悔しさが込み上げてくる。 何とも言えない虚しさも。
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

614人が本棚に入れています
本棚に追加