【暴走Ⅲ その弐】

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『翔は、その女は遊びだったのか?』 おい!竜兄。そんな事、聞くのか? 『いや。遊びじゃない。俺が本気になった初めての女だ。それまでは、誰とでも遊んでたけどな。でも、そいつは違う。そいつは、俺に言い寄ってくる女共とは違った。俺を何も言わずに助けてくれたんだ。族同士の抗争で、蓮兜とはぐれてボロボロな状態でビルの間で休んでたら、突然現れて何も言わず、ただ微笑んで手当てをしてくれた。看護師だったんだよ。そいつと付き合うようになって、女遊びもやめた。だけど、族の特攻隊長してたから喧嘩は毎日で、あいつはいつも止めてた。それでも、止めるあいつを見て思ったんだ。俺は極道の息子。組に入る事になれば、毎日こいつを泣かす事になるって。だから、別れた。こいつに俺の人生を背負わせる訳にはいかないって。好きだから別れた。大切だから離れたんだ。勿論、今は蓮兜だけだ。だけど、女で心から愛したのはアイツだけだった。』 色んな愛の形があるけど、翔兄の愛は切ない。 『そうか。でも、何で今頃になって子供が居るって言って来たんだ?黙って一人で育てる覚悟だったんじゃないのか。その女。』 あぁ。確かに。 竜兄の質問に納得。
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