【暴走Ⅲ その弐】

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『あいつは俺に一生、言うつもりも会うつもりも無かったんだ。』 「じゃあ、何で?翔兄の事、好きで産んだかもしれないけど翔兄の事を考えてずっと黙ってきたんでしょ?それが、5年も経ってから何で急に子供が居たなんて知らせてくるの?」 私には理解できない。 『連絡をしてきたのは、その人の親友なんだ。』 蓮兜兄が答えた。 『あいつ。…癌なんだよ。』 「……癌?」 『あぁ。前から体調が悪かったらしいんだが、なんせ子供の為に必死に働いてきたから検査もしなかったらしいんだ。最近、勤務中に倒れてそこで分かったらしい。でも、もうすでに末期だったんだ。』 そんな……。 『だからね。翔とおれ。二人で子供育てる事にしたんだ。』 蓮兜兄の言葉に驚いた。 「…育てるって…。そんな簡単な事じゃないよ。覚悟がいるよ。そんな簡単に決めて大丈夫なの?」 子供一人育てるって事は、本当に覚悟がいる事だ。 その子の人生を背負って生きなければならない。 その子がきちんと成人するまで、自分を犠牲にしても責任を持たなければならない。 それなのに……。 『蘭花。翔も蓮兜も、ちゃんと話し合って出した答えなんだよ。決して簡単に決めた事じゃない。そうだろ?』 竜兄が二人に聞いた。 『うん。ちゃんと話し合って決めた事だよ。おれも最初聞いた時は、戸惑った。だから、翔にも時間をもらったんだ。翔が昔愛した相手との子供を引き取りたいって言った時は、何も言えなかった。でも、考えても答えは見つからなかった。だけど、やっぱり翔の事は大切だから。』 …蓮兜兄。
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