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「…だけど…。あっ。その人の両親とか親戚は?」
こっちだけで決められる事じゃない。
『あいつな。両親も親戚すらいねぇんだよ。施設で育った奴だから。』
『だから、お前が父親として引き取ろうと思ってるのか。』
竜兄が翔兄に聞いた。
『あぁ。今はまだ入院してる。子供は勤務先の病院で入院しながら、同僚とかが一緒に見てくれてるんだと。事情を知ってる親友が、俺にそう言って連絡してきた。さっきな、ここに来る前に病院に行って会ってきた。蓮兜も連れて。俺達の関係も話した。それから、俺達が子供を引き取りたいって事も。そしたら、あいつボロボロ泣きやがって…。ありがとうって。…これで、安心して…死ねるって…微笑んで…あの時みたいに…俺に…優しく微笑んで…。俺は…あいつを…あいつを捨てたのに…なのに…ありがとうって……』
泣きながら言う翔兄から、その人への後悔の気持ちと愛していた想いが痛い程伝わった。
蓮兜兄が翔兄の涙を隠す様に抱き寄せた。
「翔兄。その人は翔兄に捨てられたなんて思ってないよ。きっと翔兄の気持ち分かってるよ。だから、翔兄の子供を産んだし翔兄にも優しく微笑んでくれたんだよ。だから、その人の大切に育ててきた子供、蓮兜兄と二人で大事にしてあげて。大切に育ててあげて。」
翔兄は蓮兜兄に抱き寄せられたまま、ありがとう。と、何度も何度も呟いた。
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