【暴走Ⅲ その弐】

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「…あの。翔兄から話は全部聞きました。」 『そう。……私ね。翔の事、ほっとけなかったの。最初に会った時も、傷だらけで。何か人を寄せ付けないような目付きしてたし。それでも、看護師として怪我人をそのままにはできないでしょ。だから、警戒されない様に近づいた。あれよね。凄く警戒する野良犬みたいな感じ?』 フッと笑う志穂さん。 翔兄との出会いを語ってくれた。 『だけどね。接してるうちにね。このまま、ほっとけないなって思ったのよ。まさか、17歳だなんて思わなかったけどね。とりあえず、手当てしてあげたらね。連絡先教えといてくれって言うから、教えたのよ。それから、2日位してからかな。連絡が来て、会えないかって。私も少し気になってたから了承したわ。そしたらね。いきなり、惚れた!って。いきなりよ。可笑しくて。で、私ももっと知りたいなって思った。』 幸せそうに微笑みながら話す志穂さんは、凄く嬉しそうだった。 『付き合いだしたんだけどね。毎日の様に傷だらけなのよ。暴走族に入ってるのは知ってた。だけど、やっぱり好きな人が傷つく姿は見たくないじゃない。だから、止めたわ。でも、変わらなかった。いつも、手当てする時には、ゴメンって言うくせにね。泣きながら止めた時もあったな。それでも、行かないといけないからって。それで、またケガしてくるの。』 少し悲しそうな表情をする志穂さん。 「…別れようとは思わなかったんですか?」 『ん。何度か思ったわ。だけど、翔は優しいのよ。いつもいつも優しいの。 最初の印象とは全然違ってね。だから、愛し過ぎて別れられなかった。喧嘩ばかりしてケガばっかりしてくるんだけど、それ以外では文句のつけ様の無い男だったわ。17歳には、とても、思えない位。だから、私は愛し続けたの。』
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