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志穂さんはボロボロ涙を流した。
「翔兄も蓮兜兄も、きっと大事に大切に志穂さんの子供、育ててくれると思います。私も一緒に面倒見ます。だから、安心して下さい。寂しい思いも悲しい思いもさせません。ずっと、愛して育てていきますから。だから、残りの人生笑って生きて下さい。お母さんの笑顔、その子の心に残してあげて下さい。」
志穂さんを見つめ微笑んだ。
『…ありがとう。…本当にありがとう。翔を愛して良かった。…あなた達に出会えて本当に良かった。…宜しくお願いします。』
そう言って、志穂さんは泣きながら私に頭を下げた。
『ママー!』
そこに子供が入って来た。
『志稀(しき)。こっちにおいで。お姉ちゃんに挨拶は?』
『こんにちは。お姉ちゃん、誰?』
「こんにちは。志稀君。お姉ちゃんは、お母さんの愛した人の妹よ。よろしくね。」
お母さんの横で手を繋いで立っている志稀君に微笑んだ。
『志稀。お母さんが居なくなっても、志稀の事愛してくれる人は沢山いるから。このお姉ちゃんも志稀を愛してくれるわ。だから、お母さんが居なくなっても泣いたらダメよ。男の子なんだから、涙を見せたらダメ。分かった?』
『うん!ボク。泣かないよ。』
優しく微笑み志稀君に言い聞かせる志穂さんは、本当に綺麗に笑う人。
翔兄が心から惚れた優しい微笑みの人。
それから、志稀君とお喋りをしたり散歩をしたりした。
今、志稀君は4歳。
もうすぐで、5歳になるらしい。
「今日は、突然すみませんでした。志穂さんに会えて良かったです。お話出来て、翔兄が言う様に素敵な方だなって思いました。また、来ます。今度は私の愛する人も連れて来ますね。じゃあ。お大事に。志稀君。またね。」
『蘭花ちゃん。本当にありがとう。ほらっ。志稀。お姉ちゃんにバイバイして。』
『お姉ちゃん。バイバイ!』
「志稀君。バイバイ。」
志穂さんに頭を下げ、志稀君に手を振って病室を後にした。
志稀君は、目元が翔兄に似ていた。
笑った顔は志穂さんに似ている。
二人の子供なんだと改めて思った。
志穂さんは、本当に優しい人で一緒に居たら凄く落ち着く。
あの頃の翔兄には、唯一癒される安心出来る場所だったんだと思う。
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