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翔兄が全てを話した。
志穂さんの事。
志稀の事。
志稀を引き取ると言う事。
蓮兜兄との事。
そして、志稀を蓮兜兄と育てるという事。
全てを。
『おじさん。すいません。今まで散々世話になっているのに。大事な息子さんを俺に下さい。』
おじさんは、じっと翔兄を見た。
『蓮兜。蓮兜は翔と居て幸せか?』
そして、蓮兜兄に問いかけた。
『はい。小さな頃からずっと一緒に居たから。翔はおれにとって、なくてはならない存在です。』
『…そうか。分かった。まぁな。大体の事は龍華から聞いてたからな。今更、驚きはしないけどな。翔。俺の大事な一人息子だ。よろしく頼む。』
『はい。ありがとうございます。』
『で?その子か?翔の息子は。』
父さんが私の横に座る志稀に視線を向けた。
『おいっ。坊主。こっち来い。』
手招きをして志稀を呼んだ。
私は志稀の耳元で大丈夫。と囁き背中を押した。
ゆっくり父さんの方へ行き、目の前で立ち止まった。
父さんは志稀の頭をガシガシと撫で、ニッコリ笑った。
『よおっ!お前、名前は何て言うんだ?』
じっと父さんを見つめて志稀が口を開いた。
『…志稀。…西極 志稀。』
驚いた。
昨日、籍を変えてから志穂さんが志稀に教えたらしい。
だけど、昨日教えたばかりだ。
今までの名字を捨て、新しい名を名乗った志稀。
父さんも一瞬、目を見開いた。
『そうか。志稀か。いいか。志稀。今日から、ここがお前の家だ。そして、俺がお前の爺ちゃんだ。爺ちゃんって言うなよ。龍華さんって呼べ。分かったか?』
『……龍華さん…。」
志稀は父さんの名前を呼んだ。
『そうだ。お前、賢いな。こっちが、詩音さんだ。そして、こっちの爺ちゃんは爺ちゃんでいいぞ。』
おじさんを見てにやける父さん。
『龍華。てめぇ。何で俺だけ爺ちゃんなんだよ。志稀。俺は、海里だ。海里さんと呼べよ。』
『海里さん。』
『そうだ。いい子だな。志稀。』
おじさんもニッコリ笑った。
『志稀。こっちに来なさい。』
ビシッといい放つのは、詩音さんだった。
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