【暴走Ⅲ その弐】

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すると、詩音さんから逃げ出したらしい志稀が私に抱きついて来た。 「おっ!志稀。どうしたの?」 『お姉ちゃんはボクの。』 ……はい? 『あー。そう言えば、志穂が言ってた。志稀が蘭花に一目惚れしたみたいだって。病院で一緒に遊んだりしたんだろ?帰った後もずっとおまえの事、話してたみたいだぞ。』 翔兄が言った。 「…一目惚れって。私、一応志稀のおばさんになるんだよね。」 すると、後ろから竜兄が抱きついて来て志稀に言った。 『ダメ~。このお姉ちゃんは、俺の。志稀は別の人探しなさい。』 おいおい。5歳児相手に何言ってんだ。 『ヤダ!蘭花はボクの!』 あー。いつの間にか呼び捨てになったよ。 『だーめー。あげない。』 おーい。 竜くーん。 と、まぁ。 志稀と竜兄の戦いは、これからも続く様です。 でも、良かった。 蓮兜兄もほっとしてる。 志稀は本当に強い子だ。 いきなり連れて来られた家で、初めて見る人達に囲まれても怯まない。 そして、しっかり受け答え出来る度胸。 父さんと詩音さんは、小さい頃の翔兄を見てるみたいだと言っていた。 でも、きっと志稀は志穂さんがこれまでしっかりと育ててきた証。 一人でも強く生きていけるように。 どんな事にも屈しない強い心を育ててくれたんだ。 志稀を見て思う。 この子は、極道の息子として生まれてきた子だと。 きっと、産まれた時から運命が決まっていたんじゃないかと。 志穂さんと翔兄の出逢いもこの日の為にあったんじゃないかと。 辛い恋だったけど、最後に綺麗な顔で微笑んで眠りについた志穂さんの顔が浮かんだ。 志穂さん。 志稀は絶対に幸せになる。 翔兄の元で今まで志穂さんに向けられなかった愛情を注がれる。 だから、安心して下さい。 そして、ずっと見守って下さい。 志穂さんも幸せだったと思える様に。
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