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すると、詩音さんから逃げ出したらしい志稀が私に抱きついて来た。
「おっ!志稀。どうしたの?」
『お姉ちゃんはボクの。』
……はい?
『あー。そう言えば、志穂が言ってた。志稀が蘭花に一目惚れしたみたいだって。病院で一緒に遊んだりしたんだろ?帰った後もずっとおまえの事、話してたみたいだぞ。』
翔兄が言った。
「…一目惚れって。私、一応志稀のおばさんになるんだよね。」
すると、後ろから竜兄が抱きついて来て志稀に言った。
『ダメ~。このお姉ちゃんは、俺の。志稀は別の人探しなさい。』
おいおい。5歳児相手に何言ってんだ。
『ヤダ!蘭花はボクの!』
あー。いつの間にか呼び捨てになったよ。
『だーめー。あげない。』
おーい。
竜くーん。
と、まぁ。
志稀と竜兄の戦いは、これからも続く様です。
でも、良かった。
蓮兜兄もほっとしてる。
志稀は本当に強い子だ。
いきなり連れて来られた家で、初めて見る人達に囲まれても怯まない。
そして、しっかり受け答え出来る度胸。
父さんと詩音さんは、小さい頃の翔兄を見てるみたいだと言っていた。
でも、きっと志稀は志穂さんがこれまでしっかりと育ててきた証。
一人でも強く生きていけるように。
どんな事にも屈しない強い心を育ててくれたんだ。
志稀を見て思う。
この子は、極道の息子として生まれてきた子だと。
きっと、産まれた時から運命が決まっていたんじゃないかと。
志穂さんと翔兄の出逢いもこの日の為にあったんじゃないかと。
辛い恋だったけど、最後に綺麗な顔で微笑んで眠りについた志穂さんの顔が浮かんだ。
志穂さん。
志稀は絶対に幸せになる。
翔兄の元で今まで志穂さんに向けられなかった愛情を注がれる。
だから、安心して下さい。
そして、ずっと見守って下さい。
志穂さんも幸せだったと思える様に。
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