【暴走Ⅲ その参】

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結局、その日は志稀が格闘技おしえてと煩くて道場へ行った。 「志稀。まずは、集中する事から教えるから。そこにこうやって座って。」 志稀は、言われるがままに座禅を組んだ。 「そのまま目を瞑るの。頭の中、真っ白にして何も考えないで。周りの音も全て閉ざして。集中。」 シンとする道場の中。 志稀は凄い子だと思う。 5歳位の子は、私の知る限り集中力はあまり無いはず。 一番、暴れて言うことを聞かない時期だと思っていた。 でも、この子は違う。 本当に強くなりたいというのがあるのだろうか。 私の言う事を確実にこなす。 現に今も静かに座禅を組み集中できているのだ。 この子は強くなる。 肉体的にも。精神的にも。 そっと目を開け、志稀に近づき後ろへ廻った。 まだ集中出来ている。 手を広げ頭の上から軽く振り下ろした。 !!避けた! なんと、志稀は私の手を避けたのだ。 『蘭花。叩かないでよ。』 後ろを振り向き私に言った。 「……凄い。志稀!凄い!何で分かったの?」 『えっ?だって、叩かれそうな気がしたから。』 凄い。 無意識だが、殺気を感じたのだ。 本当に驚いた。 まだ5歳なのに。 鍛えがいがあるかもしれない。 「志稀。それは、殺気を感じたからよ。目を瞑って集中する事で、目に見えてない敵から殺気を感じられる様になるの。だから、後ろからの攻撃も避けられる様になるの。いい?敵は前から来るとは限らない。それに、一人だけ相手だとは限らないから。人数が多ければ多い程、集中力は必要になってくる。とにかく、今はその集中力を高める事からね。」 『うん。蘭花の言う通りにする。』 「いい子。だけど、分からない事はきちんと聞いてきて。我が儘はダメだけど、自分の意見はちゃんと相手に伝えなさい。」 うん。と頷き私を見詰める目は翔兄を見ている様だった。
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