第3話 セラス学園

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「無属性とは、中々有用そうな属性だな」 感心しながら、幼女の治癒を他人事のように眺めていると、幼女が魔法を終わらせてこちらを振り返った。 精一杯恐い顔をしているつもりだろう。俺を睨んできた。 「わたしに『子供』って言うな! 七十五歳なんだからね」 …リアルにお年寄りだな。しかもその口調で、か。魔法があるから何でもありなのかな。 だが、七十五歳なら確かに呼び方を改めるべきだ。 「となると、婆さんと呼べば良かったのか。すまなかったな」 「ちっがぁーうっ! セラス学園長先生って呼びなさい!!」 学園長だったのか。 叫ばれた言葉に、俺は先程幼女…婆さ…セラス学園長が偉そうな椅子に座っていた理由を悟り、首を縦に振る。 「分かった」 あっさり了承した俺に、セラス学園長は、何故か驚いた風に目を瞠った。 「え、い、意外と素直なんだね…」 …俺は別に嘘を言った覚えはないが。 俺は話の真意を掴みかねて、学園長を見やった。 しばし考える。 「…あぁ、振りだったか」 友人が、「誰かがやるなと特に強調したら、やれwww振りだからwww」と言っていたような気がする。 「つまり、婆さんと呼んだらいいんだな? 大丈夫だ、理解したから」 俺は答えが分かった満足感に浸り、頷く。そういうことだったんだな。 それを聞いたセラス学園長は、ぎょっとしたような表情で両手をぱたぱたさせる。 「振りじゃないよ!? その見解めちゃくちゃ間違ってるんだけど!?」 「…成程、それも振りか。コミュニケーションとは奥が深いな」 「あ、この反応、わたしをからかってない……ただの天然だ。 ……じゃなくて、誰か助けて! 話が通じないよ!」 学園長が悲鳴をあげた。 その上、天然呼ばわりされるのはトラックで死んだことになってから三回目だ。 …天然で悪かったな。 というか、全く解せん。
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