第3話 セラス学園

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「そうだな…今北産業 ・俺、廊下歩く ・リーフェンシュタール先生、賊と勘違い ・火事 といった流れだ」 聞いた話では、今北産業=今来たばかりの人に三行で説明すること、の略らしい。 俺の適当な返答に、混乱教師が額に手を当てた。 「…大体把握しました。リーフェンシュタール先生は早とちりで有名ですから…。しかも、大抵悪い方に」 友人風に言うと、『リー先生人間不信すぎワロエナイ』だろう。 あの男は、人の名前を覚えるのは苦手だったからな。大体二文字くらいに略していた。 へらへらする友人を思い浮かべていると、「すみませんね」と眉をハの字にする混乱教師。 「いや、構わない」 俺は、教師に片手を振って謝罪を軽く流す。 他人の代わりに謝るとは…『紅い月』のマスターも真面目だったが、この混乱教師も大概だな。 俺が、こうしてマスターと混乱教師の真面目度を比較している頃、ようやくリーフェン(略)先生が饅頭から救出された。 他の教師の手を借りて立ち上がり、俺の方を見る。 リーフェン(略)先生は、俺と目が合うなり、ふんっと鼻を鳴らした。 「お前なんかが試験に受かるわけがない。せいぜい学園長様の気まぐれを祈っていることだ」 編入希望者を不審者扱いして攻撃しまくった割には、反省の色が見られない。非常に態度が悪かった。 だが、俺も必ず受かるとは確信していないので、頷いておく。 「あぁ。ありがとう」 「…なっ……!」 貶した台詞に礼が返ってきて、リーフェン(略)先生が怒りに顔を歪める。 …やはり、沸点が低いのか。 しかし猪突猛進なだけあって、それ以上の嫌みを吐く語彙力がなかったらしく、くるりと背を向け足早に去っていった。 それを見送り、隣の混乱教師が嘆息した。 「本当にすみません。美人なんですけどね…。早とちりと自分の失敗を認めないところが玉に瑕です」 混乱教師は愚痴っぽくなったことに気付いたようで、気を取り直して俺に微笑む。 「ひとまず、学園長室に行きましょうか」
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