第3話 セラス学園

7/13
2120人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
その電波の受信を最後に、俺は死…………ななかった。軽い冗談だ。 実際は、物凄い勢いで額に飛んでくるペンをキャッチしただけだ。 物凄い勢いと言っても、現在の動体視力で見ればやはりスローモーションだな。 「…危ないな」 ふぅ、と被害者アピールとして息を吐き出す。 ペンを投げた張本人らしい幼女に、俺は尋ねてみた。 「もしかして、くれるのか?」 ……………。 「やらんわ図々しい!!」 幼女の絶叫が、学園中を木霊した。 よくもまあ小さな体からこんな雷のような声が出るものだ。 幼女は大声の出しすぎで、ぜーはーぜーはーと肩で息をしている。 空気がびりびり振動するほどの叫びだったが、俺は直前に耳を塞いだので無事だ。 俺の勘はかなり役に立つな。 …しかし代わりに、ニール先生が被害にあい、両手で顔の横を押さえていた。 どうやら彼は耳が弱かったようだ。 「うぅ、鼓膜が、鼓膜がっ」 「大丈夫か?」 涙目のニール先生の様子を見ていると、床に足裏の付かない、体型と不釣り合いな大人用の椅子から飛び下り、幼女が駆け寄ってきた。 「ご、ごめん!」 謝ってニール先生の顔を覗き込み、先生の耳に手を翳す。 「ええっと……そう、【治癒】!」 幼女の手の平から出てきた、柔らかな白い光が耳を照らした。 ほぅ。確か、治癒や再生が使えるのは無属性のみだったな。 無属性というのは、この世界では火、水、風、土のどれにも属していない属性で、使用可能なのは「治癒・再生」と「結界」、「強化」。 世界の知識が正しければ、百人に一人の割とレアな属性だったはずだ。 まあ、俺も持ってはいるんだが。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!