第4話 素寒貧少年

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金がない。 それが、編入試験を終えて宿屋に宿泊し、次の朝目覚めた俺の最初の台詞だった。 一週間後に編入が決まったはいいが、残念なことに編入するまでは寮に入れない。 つまり、「一週間分の宿代はどうするんだ?」ということだ。 冒険者ギルドで稼ぐ――それは完璧な案だ。俺がGランク冒険者でなければ、の話だが。 Gランク依頼の報酬は、はっきり言って雀の涙だ。 誰でもできる小遣い稼ぎ程度の依頼、それがGランクだからな。 Fランクからは本格的に『冒険者』らしい討伐依頼などがあって報酬も跳ね上がるんだが、数日でFになるのは不可能だ。 推薦された場合は別に、達成した依頼の数が二十を超えないと、昇格試験が受けられないと聞いた。 ……遂にホームレス少年か? いや、まだ道はある。まずは依頼を受けてから考えよう。 宿を出た俺は、冒険者ギルドに向かった。 ――数分後。 「まだ道はある、というのは勘違いだったか」 冒険者ギルドに到着した俺は、ある場所を見つめて呟いた。 目の前には、一枚たりとも依頼が貼られていないGランク区域のボードが、不自然にのっぺりと存在を主張していた。 …どうしたものか。 というか、何故依頼がこんなにないんだ。 「…悪いが」 俺は受付嬢に声をかけた。とりあえず、理由を尋ねてみることにする。 「はい、何でしょう」 「Gランク依頼は…」 「ありません。本日、元々依頼は少なかったのですが、学園の生徒が体験学習に来まして」 それで、完全になくなったというわけか。運が悪いな。 「分かった。ありがとう」 「いえ」 理由は聞けたので、説明してくれた受付嬢に礼を言う。 ギルドを去って適当に歩きつつ、しばし黙考した。 宿代は一泊銀貨四枚、約四千円。それだけ稼がないとホームレスになるわけだが、何かないだろうか。
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