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「期限は来年の春まで。
それまでは紗枝の
好きにしたらいい。
だけど春になったら…
神川から引っ越そう」
「…え?」
「ずっと言ってただろう?
紗枝は生まれ育った海の傍で
老後を迎えたいって。
だから全てが終わったら
紗枝の生まれた新潟に…
……二人で帰ろう」
やんわりと微笑んで言った
孝之の言葉に堪えきれない
思いがまた込み上げる。
誰よりもズルいのは…
────孝之だ。
私の弱さを全て知っている
孝之に、刃向う事なんて
出来なかった。
「期限までの間も、
生活は今まで通りで構わない。
俺は紗枝の全てを
受け止めるよ」
そう言って孝之は
優しく微笑むと
寝室へと入って行く。
その背中を見つめながら思った。
これが…
夫がありながら
他の男に抱かれた私に
神が下した罰なのだろうか…。
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