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しばし腕を組んで
考えていた孝之が
ポツリと言葉を放つ。
「じゃあさ、紗枝。
もしもその男が移植を受けて
生きる望みを手に入れる事が
出来たとしたら…
それで紗枝は満足するの?」
孝之の質問の意図が
分からなくて返事が出来ない。
沈黙したままの私に
ゆるゆると孝之の手が
伸びて来ると私の頬を
大きな手が包み込んだ。
「頭を冷やして考えてみたけど
他の男に抱かれたとしても
俺が紗枝を愛してる気持ちは
変わらなかった」
真っ直ぐに見つめられて
言われた言葉に
胸がズキズキと痛み出す。
けれど私にだって疑問がある。
「…嘘を言わないで」
ポツリと呟いた声に
彼は微かに瞳を揺らした。
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