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「押し付けがましい
愛かも知れない。
でも紗枝の話を
聞いてて思うんだ。
その男…本当に紗枝を
愛しているんだろうか?」
「……………」
「身体だけだったら…?
お前が傷つくだけだろう?」
無言のまま俯いた私に
更に孝之は現実を投げつける。
「それに…
紗枝がどれほどその男に
生きる選択肢を勧めたとしても
そいつがそれを拒み続けたら…
…結末はひとつしかないよね」
静かすぎる夜のリビングに
響き渡るのは時計の音。
コチコチと刻むその音は…
聖の命の期限を刻んで行く。
はらはらと再び落ちた私の涙を
孝之の指がすっとなぞった。
「俺は紗枝を残して
死ぬなんて選択はしない」
…もう何も言えなかった。
これが…私と聖の現実なのだ。
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