愛の期限

9/16
前へ
/40ページ
次へ
「押し付けがましい 愛かも知れない。 でも紗枝の話を 聞いてて思うんだ。 その男…本当に紗枝を 愛しているんだろうか?」 「……………」 「身体だけだったら…? お前が傷つくだけだろう?」 無言のまま俯いた私に 更に孝之は現実を投げつける。 「それに… 紗枝がどれほどその男に 生きる選択肢を勧めたとしても そいつがそれを拒み続けたら… …結末はひとつしかないよね」 静かすぎる夜のリビングに 響き渡るのは時計の音。 コチコチと刻むその音は… 聖の命の期限を刻んで行く。 はらはらと再び落ちた私の涙を 孝之の指がすっとなぞった。 「俺は紗枝を残して 死ぬなんて選択はしない」 …もう何も言えなかった。 これが…私と聖の現実なのだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2698人が本棚に入れています
本棚に追加