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 東島(とうとう)進駐官養成高校は夏を控えて、おお忙しだった。前期の期末試験と夏の総合運動会のための練習が重なるのだ。皇国の軍事をあずかる進駐官は官僚の多くと同じように、徹底した学歴主義だった。卒業後の進路どころか任官地や昇進にまで学内の順位がものをいう。  養成高校で学業をしくじれば、進駐官として出世できないだけでなく、生命の危険さえあった。学業不振者は安全な占領国ではなく、紛争地域や最前線に送られることがあるのだ。タツオも生まれてから初めてというほど、毎日長時間の勉強を続けていた。  問題は個人の成績だけでは、すまないことだった。班全体の成績と個人成績は同じだけの比率をもっている。どれほどほかの3人が優秀でも、落ちこぼれがひとりでもいれば、班の成績は目も当てられない。自分のためだけでなく、おたがいに助けあって最高位を目指す。決して仲間を見捨てない。進駐官としての徳目育成は、養成高校から始まっていた。
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